病院が止まり木ではなくなった人たち
こんにちは、
精神科医の諸藤えみりです。
今日は
10代の方の精神科入院について
わたしが考えていることを
お話します。
病棟に高校生が
入院するときがあります。
(特定されないよう配慮しています。)
ある高校生は両親と不仲で
家に居場所がありません。
学校にも居場所がないです。
病院に長期入院していました。
たまに外出や外泊をするけれど、
大量服薬など
問題を起こしてすぐに帰院します。
この方を見ると
病棟が居場所に
なってしまっています。
一時的に病院が居場所になるのは
いいです。
病院が止まり木となり、
また羽ばたく。
でも、この方はそうではありません。
病院でしか
生きられなくなっています。
社会にまた戻る姿が見えません。
10代の思春期の方を
入院させる判断は本当に難しいです。
家や学校に居場所がないからと言って
安易に入院させると、
まれに退院できなくなることが
あります。
本来、
病棟は居心地が悪いです。
食事や就寝の時間が決まっている。
娯楽も少なく、自由がない。
「早く退院したい。」
これが普通です。
しかし、
居心地が良いと
感じてしまう方がいます。
家と違ってスタッフは優しい。
自分を温かく受け止めてくれる。
煩わしい学校の友人関係からも
解放される。
結果、
外に居場所を
作ろうとしなくなるのです。
たとえばです。
旅行で温泉に行くとしますね。
何泊かしたら
家に帰るじゃないですか。
でも、
このような方は
ずっと温泉に入っている。
帰らない。
入院も同じです。
これではいけない。
一度こうなってしまったら、
元の生活に戻るのには
莫大な時間と労力がかかります。
人は居心地がいい環境を
わざわざ手放さないので。
こちらも腹をくくって
付き合うしかない。
その一方で、
このような方は
「心の奥底では病棟を
『心地いい』
と思っていない。」
とも思います。
10代の方が
病棟での生活を
良しとするはずがない。
他に居場所がないから
病棟にいるだけ。
そう思うと
やるせない気持ちになります。
「思春期病棟の少女たち」
モヤモヤしているわたしに
上司が教えてくれた本。
読んでみた。
壮絶だった。
「17歳のカルテ」の名前で
映画化もされている。
アンジェリーナジョリーが
アカデミー助演女優賞を取った作品。
自分の意思で
「病院を出たい。」
と、思うことの重要さを
わたしは感じました。
よければ見てみてくださいね。
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