ストレスでもやらなきゃいけないときがある
こんにちは、
精神科医の諸藤えみりです。
今日は
ストレスでも
やらなきゃいけないときがあるよ
って話です。
登場人物は
中学生の男の子です。
外来に
中学生の男の子が来ています。
(特定されないよう配慮しています。)
いじめをうけ不登校になり、
小学生のときから
学校に行っていません。
人が怖く
家族以外とは話せません。
私の外来には
月1回頑張って来てくれています。
でも、
1人で診察は受けられず
お母さんと一緒です。
話すときに目線は合う。
ちょっとだけ話してくれる。
これって実は
めちゃくちゃすごいことなんです。
人の目を見て話せない人は
たくさんいます。
緊張しながらも
私と真摯に
向き合ってくれているんだなと
感じます。
今年度で中学校を卒業するので
進路を考えないといけません。
どうするかを聞くと
「通信制の高校に行きたい。
でも、
高校から出される課題を
できないかもしれない。」
と、言われます。
勉強しようとすると
いじめられたつらい記憶がる。
今まで勉強できなかったそうです。
私は考え
「外来で作業療法ができます。
私や作業療法士さんと一緒に
勉強しませんか?
人になれる練習もしましょう。」
と、提案しました。
私の提案を聞いた彼は
表情が抜け落ちた
能面みたいになっちゃって、
私は
「あちゃー、まだ早すぎたかな?」
と焦りました。
でも、時間がない。
進学は目の前。
提案だけでもしといた方がいい。
この方の夢は
バイトをしたお金で
欲しいものを買うことです。
この夢を出して私は話します。
「『バイトして
欲しいものを買いたい』
と教えてくれたじゃないですか。
夢を持つことは素晴らしいです。
でも、
思ってるだけじゃ叶いません。
どうしても行動が必要なんです。
やりたくないことや
嫌なことを
しないといけないときがあります。
◯◯さんにとって、それは
人と接することかもしれません。
人とまったく関わらないですむ
バイトはないです。
人と関わるのは
ストレスですよね。
でも、
嫌だから、
怖いからと言って
家に閉じこもっていたら
何も変わりません。
いつか勇気を出して
一歩踏み出さないといけない。
その練習を私としませんか?
すぐに答えを
出さなくていいですよ。
少し考えてみてくださいね。」
と、伝えました。
今回断られたとしても
いつか一緒に
勉強できればいいなと思います。
私は、
外来に来てくださる方が
社会に復帰できるよう
サポートするのも、
主治医の務めだと思っています。
それには
話を聞くだけでなく
ときには背中を押すことも
必要です。
ストレスでも
やらなきゃ前に進めないときもある。
この方はやれると思う。
だって、
ずっと家にいたのに
月に1回私の外来に来ています。
頑張る姿は眩しくて尊い。
ただ、
今回反省した点もあります。
この子のお母さんに対してです。
「外来で勉強する。」
の提案を本人にする前に、
お母さんは
息子さんの今後について
どう考えているのかを
聞きました。
曖昧な返事でした。
私は
「自分の子供のことなのに
何も考えていないのかな?」
と、静かな怒りが出ました。
外来後、
作業療法士さんや
ケースワーカーさんに相談したとき
「お母さん、
どうしていいのか
分からないのかもしれないですね。」
と言われました。
私はハッとしました。
お母さん自身も大変で
自分のこともままならない状況です。
それなのに私が勝手に
「~してほしい。
親はこうあるべきだ。」
を押し付けていたことに
気づきました。
反省しました。
私がやることは
お母さんを責めることではなく、
息子さんのサポートを
することでした。
この方が次回外来に来られたときに
どんな返事をするのかは
分かりません。
結果はどうあれ、
私ができることを考え
サポートを続けていきたいです。
0コメント