体の傷は我慢できるけど、心の傷は我慢できない



こんにちは、

精神科医諸藤えみりです。



体の傷は我慢できるけど、

心の傷は我慢できないという

お話をします。




外来に

女性が来られています。

(特定されないよう配慮しています。)



寂しくて虚しくて

毎晩異なる男性を

渡り歩いていると言います。



私は最初この話を聞いたとき、

お金が目的かと思いました。


そうではありませんでした。



温もりがほしいと

彼女は言います。



虚しい、寂しい、愛されたいが

全身から溢れている。



私は

「寂しいからと言って、

紛らわせるために行動しても

寂しさはなくなりません。


余計にひどくなる。


たとえば、

不安から確認行為を

やめられない人がいます。


ガスの元栓や玄関の戸締り、

電気を消したかなどを

確認します。


確認した瞬間は安心できます。


でもまた不安になる。

確認する。

繰り返しです。


やればやるほど不安になるんです。

止まらなければいけません。


寂しさも一緒。


愛が欲しい欲しいと、

欲しがれば欲しがるほど

苦しくなります。


欲しがるのを

一旦やめてみてほしいです。」

と、伝えました。



一晩だけの刹那の関係で

得られる愛は儚い。


すぐに消えてしまう。


満たされることはなく

もっともっとと欲しくなる。





しかし、

女性の答えは

「先生の言ってること

よく分かんない。」

でした。



クッ、、、

まぁ、そうですよね。

私もあなたくらいの年齢のときに

言われても分からないと思う。



「じゃあ、

体にたとえます。


あまりいい例えじゃないけど、

腕を折るとしますよね。


痛いです。


「痛みを何とかして!」と、

毎晩病院に

行かないじゃないですか。


ちょっとは我慢するでしょ。


寂しくても

耐えてほしいんです。」



私の言葉に対して彼女は


「体の痛みは我慢できるよ?

でも、心の痛みは無理。

我慢できない。」





私は

何も言えなくなりました。



私は彼女の心の痛みを

完全に取り除くことはできない。



私ができることと言えば、

刹那の愛情を求める彼女を

受容すること。



最低限の身の守り方を

教えることと、

何かあったときに

すぐにSOSを出せるよう

信頼関係を築くこと。



伝わらないかもしれないけど、

「あなたが大切だから心配している」

と伝え続けること。





このような方を前にすると、

私は

何とかしてあげたい気持ちが

出てくる。



でも、何ともできないから

私も自分のふがいなさと

向き合うことになる。



心の傷はじくじく痛い。


我慢できない気持ち、

私もよく分かる。




精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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