仕事に好き嫌いを持ち込まない



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



私には

外来でどうしても

好きになれない患者さんがいます。


「世の中にはいろんな人がいる。」

「私にもこの方と同じ一面が

あるのかもしれない。」

と折り合いをつけようとするものの、

やっぱり腹が立つ。

感情的になってしまいます。



今日は

好き嫌いと仕事についてです。





詳しい説明は省きますが、

私の外来に

通院されている方がいます。

(特定されないよう配慮しています。)



言うことは毎回同じ。

「しんどいので

働くなんて無理です。」



本当に体調が悪いのだと思う。

でも、

何となく釈然としない。


「働きたくないのかな?」

と疑ってしまいます。



この方の言い分もあるし、

許容したいけれど

できない。



「優秀なカウンセラーは

自分の考えを押し付けない。」

と分かっていても

できない。


感情的になってしまう。



このままでは私の好き嫌いで

治療に支障が出ると感じ、

恩師に相談してみました。




恩師

「お仕事として

カウンセリングをするなら

使い分けなきゃダメだよ。


カウンセラーという人間と

自分の好みは別なの。


淡々とカウンセリングを

しないといけない。

自分の感情を重ねちゃダメ。


『私は嫌い。』

でも、

仕事は淡々とやればいいだけ。

自分の気分や気持ちを優先しすぎ。


外来やカウンセリングに

 自分の快感や喜びを

乗せすぎない方がいい。


僕は淡々と叱り続けるよ。

好みで対応は変えない。


たとえば

カウンセリングが終わりました。

一旦自分に戻ったときに

『あー、嫌なヤツだな。』

ってのは出てくるよ。


でも

お話を聞いているときは

コントロールしない。


必要なアドバイスはするけれど

 感情的にならない。

好き嫌いとはまた別の問題だよ。」





恩師

「それにね、

その方がどういう理由で

今の状況になっているのは

考えなくていいの。


『そういう形でしか

生きられないんだな。』

と思えばいいだけ。


えみり先生が納得できる理由を

探す必要があるのかな。


心の問題だから

そう言うのかもしれない。

これが肉体的な病気だったらどう?

納得するでしょ?


心も体も一緒なんだよね。


内科の先生だったら

淡々と作業するだけじゃない。

それでいいんじゃないの?


その代わり

終わった後には

腹を立ててもいいんですよ。」





恩師は続けます。

「そもそも

この方は

今の状況で満足なんだよ。


そのポジションにいるってことは

そこで満足してるの。

えみり先生の満足がないだけ。


『良くなってほしい』

という持ちはあると思うよ。


ただ、 すごく難しいのは、

『良くなってほしい』という

『良く』の状態は

 自分の思っているいい状態なのよ。


だよね?


そりゃ

診療していると

『もっとこうなったらいいのに』

の気持ちはなくならないよ。


けれども、

その人がそこから動きたくないのなら

それでいいんじゃないの。


定期的に

お話ができればいいって

思ってるだけかもしれないしさ。」





私はぐうの音も出ず笑


私のこの方への本心は

「あなたはできるはずなのに

どうしてやらないの?

もっと良くなってほしいよ。」

でした。



コントロールしたい気持ちが

好き嫌いに

なっていたのでしょうね。



私自身が満足したいこともあり

「良くなってほしい。」

と願ってしまう。


「良くなるはずだ。」

と期待してしまう。




内科の病院だと

かぜの症状や痛みを

治してくれます。


私は同じように

スッキリ改善させようと

していたのです。


でも

内科だって慢性の病気はある。


「悪くなっていない、

現状維持してたら花丸。」

としていたことを思い出しました。





視点を高く、

自分が満足したい気持ちは

置いておく。



私は

患者さんを良くすることが

全力で診療することだと

思っていました。



現状維持のままでいることも

立派な治療なんだと

今さらながら学びました。





精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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