世界が怖い



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



わたしの外来に

最近来られた方がいます。

(特定されないよう配慮しています。)



彼は約3年間、

学校に行っていません。

いじめで不登校になりました。



家族以外と交流はなく

他の人とは緊張して声が出ません。



カウンセリングルームに

初めて来てくれたとき、

帽子を目深に被り俯いていました。


話すこともできず

お母さんが代わりに答えていました。





ずっと家にいた方が

カウンセリングルームに来ることは

勇気がいることです。


初めて会うわたしは

どんな人か分からず、

怖いと思います。


わたしだけでなく、世界が怖い。





わたしは彼に

「勇気を出して

ここに来てくれて嬉しい。」

と、伝えました。



彼はスマホに打ち込んだ日記を

見せてくれました。



そこには

・人の役にたてない自分はダメだ

・なんで生きているのか分からない

と、悲痛な訴えが並んでいました。



読み進めていくと、最後に


「本当はバイトをしたい。

お金を稼いで欲しいものを買いたい。

でもこのままじゃ絶対に無理。

何とかしたい。」


で締めくくっていました。




わたしは

「欲しいものを買いたいよねー!!」

と、叫びました。



まず

彼は人生を諦めていません。

何とかしたいと思っています。


ここが素晴らしいです。

わたしが彼の立場なら、

不貞腐れてずっと寝てると思う。




何とかしたい気持ちはあるけれど、

どうしたらいいのか分からなくて

絶望している。



理想と現実が乖離していて

つらい。






わたしは言いました。


「バイトして欲しいものを

買いたい。

何とかしたい。

この気持ちが素晴らしいです。


でもね、ずっとお家にいたから

いきなりバイトするのは

わたしも難しいと思います。


今できることを

1個ずつやっていきましょう。


月に1回、リハビリしましょう。

わたしの外来に来る。

わたしとおしゃべりする。


わたしに慣れる。

家族以外の人と接する機会を持つ。


もしどうしてもしんどくて、

来れない日は

パスしてもオッケー。


来れなくても

わたしは

あなたのことを嫌いにならない。


ここで待ってるから

来れるときに来てね。」



そう言うと彼は顔を上げ、

わたしの目を見て頷きました。





月に1回カウンセリングルームに

来ることで何が変わるの?

と思う人もいるかもしれません。


バイトができるようになるまで

途方もなく

時間がかかります。



でも、

ただ家にいるだけでは

何も変わりません。



1歩でも2歩でも

今できることを積み上げていきます。


すると必ず前に進んでる。

いつかたどり着く。




これはわたしもそうです。

自分で言って、

自分にも当て嵌まると気づきました。



わたしも叶えたい夢があるなら

今できることをやる。



先は真っ暗で何も見えない。

でも、1つずつやる。



いつか壮大な景色が見える場所に

たどり着くと信じて

やり続ける。




彼と一緒ですね。

一緒に頑張ろうね。





精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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