薄味の幸せ



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



病棟にギャンブル依存症の方が

入院されています。

(特定されないよう配慮しています。)



借金をしてまで

ギャンブルをしてしまいました。


ギャンブルと物理的に

距離を取るための入院です。





ギャンブル依存症とは、

パチンコや公営競技のような

賭け事にのめり込み

日常生活や社会生活に

支障が出ている状況です。



脳の神経伝達物質の

ドーパミンが

深く関わっていると言われています。


ドーパミンは快楽物質です。

・意欲が出たとき

・目標を達成したとき

・心地いいとき

などに出ます。



ギャンブルで勝ったときにも

ドーパミンは放出されます。




最初は通常の分量ですが、

ギャンブルが繰り返されると

ドーパミンが過剰に

分泌されます。



ギャンブルで得る刺激は

強い刺激です。


ギャンブルをやり続けると

強い刺激に慣れてしまい、

快楽に対する反応が鈍くなります。


「もっともっと」

となります。



 こうなると

ギャンブルでしか

楽しみを得られません。


日常生活のおいしい食事、趣味など

本来は楽しいはずのものも

色褪せてしまいます。



満たされない気持ちを満たすために

またギャンブルをし、

悪循環に陥ります。




わたしは

強い刺激に慣れすぎて

快楽に鈍くなっている状況は

「幸せの閾値が上がりすぎている。」

と、考えています。



他人事ではありません。

わたしも

最初はありがたかったものが

いつのまにか

当たり前になっています。


慣れは恐ろしい。



わたしは定期的に

幸せの閾値を下げています。


・3食ご飯が食べれて幸せ

・毎日入浴できて幸せ

・お布団で眠れて幸せ

・スーパーでお菓子を買えて幸せ



これを家族に言うと、

「そんなこと?!」

と言われますが、

そんなことなのです。



幸せに刺激はいらない。

幸せは薄味。

幸せは地味なのです。




この患者さんは

無事退院されました。

アルバイトもされるようです。


「僕なりの薄味の幸せを

見つけます。」

と、言われていました。




「最近すべてが

当たり前になっているな。」

と感じたら、

幸せの閾値をリセットする。



当たり前のことなんて

何1つないのだから。




精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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