今はまだできない



こんにちは、

ドクターかよです。



今日は

他人の期待に応えられないと

逃げたくなる

私の話です。





外来に

不安障害の方が来られました。

(特定されないよう

配慮してしています。)



お話を聞き

私は薬物療法が必要な状況だと

判断しました。



内服が必要だと伝えると、

この方は不安が強いため

薬の副作用などに

過剰に反応しました。



丁寧に説明したところ、

最後には私を信じてくれ

内服することになりました。





2週間後、再診で来られたとき

その方は

「1日しか内服できなかった。」

と言われるのです。



「内服したら体がしんどくて

起き上がれなくなった。

薬が怖くなって飲めなかった。」

とのことでした。



私は申し訳なくて。

私を信じて内服してくれたのに

辛い目にあわせてしまった。



私の思い違いかもしれませんが、

何だか怒っているようにも見える。




違う種類の薬もあると

説明しましたが、

「もう薬は飲みたくない。」

と、言われます。


私はいたたまれなくなりました。



その方は続けます。


「今は

以前よりも落ち着いているんです。


薬を飲まなくても

何とかやれそうです。


このまま様子を見ていいですか?


もし、

また薬を頼りたくなったら

先生のところに戻ってきます。


必ずです。


薬は飲んでみないと

どうなるか分かりません。


今回のことは

仕方なかったと思います。


先生は

私の話を聞いてくださいました。


どの先生もみんながみんな

話を聞いてくれるとは思いません。


嬉しかったんです。


今日だって、

先生のことを信頼していなければ

来院していません。」





私は余計に

申し訳なくなってしまって。



診療に手を抜いたわけでもない。


処方が合うか合わないかは

内服してみないと分からない。


内服せずにやれるのなら

それに越したことはない。



ぜんぶ分かってる。

分かっているけれど、

ここまで言ってくださる方の

期待に応えられなかった

悔いが残る。





不安障害の方の薬物調整は

1発勝負のことが多い。


1回目の処方でこけると、

2回目からは恐怖心から

内服できなくなる。



重々承知で処方を選んだけれど、

内服できなかった。


私は結果を出せなかった。



治療が上手くいかないとき、

期待に応えられないとき、

私は逃げ出したくなる。


プレッシャーに押しつぶされて

仕事を辞めたいとまで思う。



私に求められているのは、

全力を尽くして

他人の期待に応えられなかったときに

自分を責めないこと。



責めるのではなく、

内省すること。




今はまだそれはできない。





精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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