完璧を目指さない



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



外来をしていると

「この方は

すぐによくなりそうだな。」

という人と、

「この方は難しそうだ。」

の人にどうしても分かれます。



今日は

難しい方の場合、

私がどうしているかを

お話します。





初診の時点で

「この方はすぐに回復しそう。」

「この方は難しそう。」

が何となく分かります。



もちろん

いい意味でも

悪い意味でも

予想が裏切られることもありますが、

大体は外れません。




難しそうだと感じたときに

私がまずやることは

「目標設定を下げる。」

ことです。





たとえばです。


私は過去に

「自分は肺がんだ。」

と訴える方の

主治医になったことがあります。



血液検査、

全身CT、MRI、PET、

さらには

気管支鏡検査まで受けました。

結果はすべて問題なし。



それでも

「自分は肺がんだ。」

と訴えられます。


どれだけ

「検査結果で問題ないので

肺がんじゃないですよ。」

と説明しても訂正できません。



妄想レベルの

強固な思い込みにより、

仕事にも行けなくなりました。

日常生活に支障が出ています。



この状態を

心気障害と言います。



心気障害とは

「自分は重篤で進行性の病気に

かかっているはずだ。」

という思い込みに

囚われている状態です。


短時間で

スッキリよくなるのは

難しいです。




このときに目指すことは

「自分は肺がんではない。」

と、完全に思い込みを

なくすことではありません。


1番の目標は

思い込みをなくすことではなく、

思い込みがありつつも

社会復帰をすることです。


そのために

「肺がん…じゃないかもしれない。

だったら働けるかもしれない。」

くらいに

本人の思い込みを和らげます。



「自分は肺がんではない」

という完璧なゴールではなく、

「肺がんでないかもしれない。」

という

あやふやなところを目指します。





この方は

精神療法や薬物療法で

「肺がんじゃないかもしれない。

でも、完全に疑いが

晴れたわけではない。」

と、言われるように

なりました。


思い込みが和らいだので

仕事にも復帰し、

社会生活を維持できています。

バッチリです。


ご本人さん的には

満足していないかもしれませんが、

私的には万々歳の結果です。






「肺がんではない。」

を目指すと

ドツボにハマります。



症状を見るのではなく、

その人全体を見る。


その人が本当に求めるものは何か。

1番大切なものが手に入るのなら

完璧に

症状を無くさなくていいと

考えています。





これって

私たちの日常生活でも一緒です。



完璧でなくても

十分なことは多々あります。


完璧を目指さない。

不完全のままやる。


そっちの方が

案外うまくいったりします。




私にも

完璧を目指すクセがあります。


このブログだって

完璧にいいもの、

100点にしてアップしたい。


でも、それだと

出口の見えない迷路に

迷い込むようなもの。

いつまでたってもアップできません。



60点、80点の内容でも

「今日のブログはイマイチだな~、

また頑張ろ。」

と思ってアップしています。


不完全のまま

進んでもいいと思うんですよね。




完璧を求めるときは

視野が狭くなっている。


グッと引いて、

全体を見る。



完璧を求めたくなったときは

全体を見るよう、

心がけています。





精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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