「おせっかい上等だよ。」



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



今日は

「良かれと思ってしたことが

おせっかいだったかもしれない」

というお話をします。



先日、

不登校の中学生のお話をしました。



高校に行きたい。

でも、勉強をしようとすると

いじめられた記憶が蘇って

できない。



この現状を打破するために

「病院で一緒に勉強しませんか?」

と、提案しました。



その方は緊張が強く

家族以外と話せません。



スマホに文章を打ち込み

「これから社会に出るには

勉強は必要だと思う。

嫌な気持ちもあるけど

やってみたい。」

と教えてくれました。



彼からやる気を感じ

私は喜んで日時を設定しました。



プリントを用意し

病院の個室も予約して

準備万端です。





当日。

時間になっても来院しません。

30分経過して

連絡が入りました。



今から家を出るので

病院到着は30分後くらいになる

とのことでした。



私は悩みました。

1時間遅刻されても、

私がめちゃくちゃ頑張れば

時間を作り

勉強をみることはできる。



このご家庭は家族の基盤が脆弱で、

ご両親がお子さんのサポートを

十分にできません。



「私がしっかり

サポートしなくちゃいけない。」

と思っていました。



その一方で、

「そこまでする必要があるの?」

の気持ちもあります。



結局ほかの仕事もあるので

この日はキャンセルしました。



これでよかったのかな?

とモヤモヤする気持ちがあり、

近くにいた先輩医師に

「先生だったらどうされますか?」

と聞いてみました。



先輩

「その子って、精神症状があるの?

(精神症状は

気分が落ち込む、不安などです。)


僕たちって

精神症状を治療するのが仕事。


精神症状がないなら

学校に行くようサポートするのは

行政の仕事だと思うけど。


そもそも、先生が

『一緒に勉強しよう。』

と提案して、

それに乗らなかった訳だよね?

時間に来なかった。


だったらやる必要はないよ。


その子に

どうしてそこまで入れ込むの?」



「え、、、

この子が自分の足で

立てるようになれればいいなと、、、


誰かが

この子を引っ張り上げる必要が

あるのかなと思いまして、、、」



「それって

おせっかいなんじゃないの?

その子は本当に望んでる?


んー、

児童思春期の方は

おせっかいで

上手くいくケースもあるか。


僕は児童思春期が専門じゃない。

専門の先生だと

また違った意見になるかもね。


でも

先生の患者さんは

その子だけじゃないでしょ。


どこまでやるのか、

サポートしてくれる人が

ほかにいないかを

考えないといけない。」





先輩医者を

ドライな人だと感じる方は

いらっしゃるかもしれません。



病院には

毎日たくさん患者さんが来ます。


1人の患者さんに

十分な時間を割くことが

難しいのが現実です。



先輩医師の言うことは

一理あるのです。




私は気づきました。

「私、

この子を何とかしてあげなきゃ

いけないと思ってる。」


この方を

「助けてあげなきゃ」

「守ってあげなきゃ」

の視点で見ていました。



私は

目の前に困っている人がいると

何とかしてあげたくなります。



なぜなら

困っている人を

助けられないと、

無力感や絶望感を感じるから。



本人は

困っていないかもしれない。

私が勝手に

困っている人認定を

してしまうのです。



結果、

おせっかいになるのかも

しれません。






私は方針を改めました。


「私が主体になって

アレコレ動くのではなく、

本人に提案するだけにしよう。」



次回の外来時に

プリントを渡し

家でやってもらおうと思いました。



「プリントをやるかどうかは

あなたの自由。


もし

勉強をやりたい気持ちがあるのなら

やってほしい。


将来やりたいことがあるのなら

今、自分がやれることをやろう。」

と、伝えようと思います。



本人に

やる気があるのならサポートする。

やる気がないのなら

やる気が出るまで待つ。


あくまで主体性は本人。





けれども、

「これもおせっかいなのかな?」

とよぎります。



何かのご縁があって

私の目の前にこの子が現れた。


だったら

ベストを尽くしたいのです。



外来をしながらボソリと呟く。

「おせっかい上等だよ。」








精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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