圧倒的に愛が足りない



こんにちは、

ドクターかよです。



今日は

「目の前の人を信じる。」

についてお話をします。



外来をしていて

私が思ったことです。





高校生が

外来に来られています。

(特定されないよう配慮しています。)



私の病院は

未成年の初診は

必ず保護者同伴を

お願いしています。

(大抵はその後も

保護者と一緒に来院されます。)



この方は最初から1人でした。



通院してしばらく経ちますが

親が来院したことは

一度もありません。



両親は離婚しており

父親と生活されています。


父親は忙しいのだと言われます。



うつ病と診断し、

電話で父親に状況を説明して

内服を開始しました。



気分の落ち込みは和らいだものの

スッキリしません。



「疲れてバイトを休んでしまう。」

「学校にも行きかねる。」

と言われます。



私はふと

「ご飯、食べてますか?」

と聞いてみました。



答えは「いいえ」でした。


ご飯の代わりにお菓子を食べたり、

冷凍の白ご飯を食べたりしている

とのことでした。



父親は仕事で家にいない。

そもそも父親は料理ができない。

自分が料理する元気もない。



家にあって

そのまま食べられるものを食べている

と言います。



高校時代、

家に帰れば晩御飯が準備されていた

私にとっては衝撃でした。



その方は自分のことは

すべて自分でしています。



小さい頃から

大人としての振る舞いを

求められていたのだろうなと

思いました。



親に甘えて当然の年齢のときに

自分を律している。



せつなくなりました。



圧倒的に

愛が足りていないのです。



私がお母さんの代わりになり

愛情を与え

甘やかし

満たすことができたら

いいのだけれど、

医師と患者が超えてはならない

一線です。



私のやることは

話を聞き受け止めること。



この方に伝えました。

「よし、じゃあご飯を食べることを

次の外来までの

目標にしましょうか。


お菓子を

ご飯の代わりにするのは禁止ね。


お惣菜でも何でもいいから

3食食べること。


そして夜寝る。

朝起きて日光を浴びる。


生活習慣を整えましょう。


できる?約束ね。

次の外来も必ず来てね。

待ってるからね。」

と伝える。



この方は泣きながら頷きました。





外来には

同じような方がたくさんいます。



このような方々は

自分の話を聞いてもらえる

環境がありません。


親にさえ

自分の話を聞いてもらえない。



安全な診察室で

・自分の話をする。

・否定せずに話を聞いてもらえる。

これらは

治療として非常に大切です。



「人を信頼する」

「自分の気持ちを表現する」

ステップになるからです。





月に1回

外来に来たからと言って

目に見えての

大きな変化はありません。



変わらない状況に

私が焦れるときあります。



「今すぐ何とかしてあげたい。」

気持ちが出てくるのです。

(その理由はこちらのブログ↓)




焦りが出たときは

「私が彼女を変えるのではない。

変わるときが来れば、

彼女が自分で見つけて変わる。」

思うようにしています。



彼女自身が見つけるものとは

体験だったり

誰かとの出会いだったり

さまざま。



私がアレコレ手を出すことは

彼女から経験を奪うことになります。



そのときが来るまで耐える。

待つ。


彼女は変われると

信じれるから待てる。






診察室にはいろんな人が来ます。

愛が欲しいと叫んでいる人。

愛が欲しいけれど

無言で耐えている人。



彼らを

信じるということ。



彼らは変われると

信じる。



信じられるから

どんなに苦しい状況でも

私は外来をやり続けられる。






精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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