裏切られたように感じる



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



外来で学生さんから

相談を受けました。


「人に過剰な期待をしてしまう。

自分の思った通りの

人物でないと

裏切られたと感じてしまう。」

と言われます。



なぜ裏切られたと

感じるのか。



相手に依存しているからです。





たとえばです。

誰でもいいのですが

好きなアイドルがいるとします。

(最近は推しと表現するのかな🙄)



「あの人カッコいいな~、

素敵だな~。

きっと性格も良くて

皆に優しくて

素晴らしい人なんだろうなぁ。」

と想像します。



ファンクラブに入り

グッズを購入し

お金と労力をアイドルに注ぎます。



ところが

実はこのアイドルは

性格が悪かったと発覚します。



こうなると

「思っていた人じゃなかった!!

裏切られた!!

お金を返して!!」

と、怒りに変わるわけです。


勝手に自分の想像を

押し付けていたのにも関わらず。




身近な例でもう1つ。


彼氏ができたとします。

「こんなカッコいい人が

彼氏だなんて私は幸せ者だ。

頭が良くて運動もできて

言うことがない!!」

と、ルンルンです。



が、付き合いが長くなると

その人の好ましくない部分も

見えてきます。


「あれ…??

こんな人だったの??」

と怒りが沸きます。



なぜ怒りが沸くのか。

「偶像化した相手に大切にされる私」

に酔っているからです。



「こんなにカッコいい人が

『私』を大切にしてくれる。

愛してくれる。

だから私は素晴らしいのだ。

私は大丈夫なのだ。」

と、相手に自分の価値を委ねています。


依存しているから

裏切られたと感じるのです。



つまり

自分と他者との距離が近い。

自分に自信がないから

他者からの承認を求めます。



自分が期待した人が

大したことがなかったと知ると

怒るわけですよ。

「思ってたんと違う。

裏切られた。」と。



このような人は

社会的地位が高い人から

承認されることを望みます。


「すごい人に大切にされる私」

と思いたいから。




この学生さんの場合は

学校の先生でした。



学校の先生に期待する。

でも自分の思ったように

先生は対応してくれない。

「自分はこんなに慕っているのに。」

と、裏切られたと感じる。




私の場合、

人に期待したり

裏切られたと感じたりすることは

ほぼないです。



期待して

思った通りにならなくても

「そんなものかな。」

で終わり。


「裏切られた」

という表現は使わない。



この学生さんと比べて

私は他者との距離が遠いのです。



なぜなら

他者からの承認を

もらわなくていいから。


自分で自分を承認しているから。



人に認めてもらうために

近づかなくていい。




でも、

いきなり私みたいになる

必要はないです。



思春期は未熟。

自分に自信がない。


自分が正しいのか

正しくないのかも分からない。


他人との距離が分からなくて

当たり前。



近すぎてぶつかって

遠すぎて寂しくなって、

試行錯誤しながら

自分にピッタリの距離を

見つけていくのです。



こんな話をすると

学生さんは

「もう傷つきたくない…」

と言います。



うん、分かる。

傷つきたくないよね。



でも

傷つくのも思春期の特権。

すぐに遠い過去になる。



大人になって

傷つく方が大惨事よ。

(私の経験談)




裏切られたと感じる。

他人に依存する

自分の弱さを知る。


経験が自分の糧となる。










精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

0コメント

  • 1000 / 1000