感情が分からない
こんにちは、
精神科医の諸藤えみりです。
私の外来に
会社員の方が来られました。
(特定されないよう配慮しています。)
コロナが流行ってから
夜眠れず、
頭痛やめまいに
悩まされるようになりました。
仕事にも支障が出ています。
内科に行っても
悪いところはない。
最終手段として
私の外来に来られました。
彼のお話を一通り聞き、
私は尋ねました。
「お話を聞くと、
周りに親しい人がいなさそうです。
コロナになってから
私は淋しいと感じることが
増えました。
そのときは
友人とお喋りします。
淋しいときは
どうされているのですか?」
その方はおっしゃいます。
「僕は淋しいという感情が
分からないのです。」
外来をしていると
感情を切り離している方が
たまにいらっしゃいます。
ネガティブな感情に耐えきれず
感情を感じないようにする。
切り離す。
しかし、
感じないようにしているだけで
実際には感情はあります。
体に症状を出して
「気づいて」
と、SOSを出します。
その方のお話を掘り下げると
嬉しいや悲しいも
よく分からないと言われました。
私は言いました。
「もしかしたら
感情を感じにくく
なっているのかもしれません。
感情を感じなくても
体には反応が出ます。
頭痛、めまい、倦怠感、動悸、
胃腸症状など、さまざまです。
適切な治療を受けつつ、
感情を感じる
リハビリをしましょう。
まずは五感。
ご飯を食べておいしいと感じる。
お布団にくるまって
気持ちいいと思う。
1つずつ感じてみてください。
体の症状がどうなるか
一緒に検証していきましょう。」
そう言うと
彼は「やってみます。」
と、言ってくれました。
この方は
昔好きだった趣味のスケートを
再開したそうです。
「とても楽しいです。」
と言われていました。
体の調子も良さそうです。
嬉しいも悲しいも感じないのは
ロボットと同じです。
感情を感じないようにしたのは
自分を守るため。
でももう大丈夫。
感情は敵ではありません。
「こころ」を取り戻す。
それは切り捨てた自分を
もう一度拾うということ。
人生を取り戻すということ。
感じるから
生きていることが分かる。
心があるから
自分らしく生きていける。
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