「実は1日2回お祈りをしている。」



こんにちは、

精神科医の諸藤えみりです。



「いつからでも

何歳になっても

心の平穏は得られる。」


患者さんから教えてもらったので

今日はそのお話をします。





アルコール依存症の

80代のお爺さんが

いらっしゃいます。


デイケアに来られてて、

毎週一緒にお散歩しています。

(通称デート)



この方の何がすごいって、

断酒できている。

もう何年も。



過去は

お酒絡みで大惨事でした。

それはもう言葉にできないくらい。


酒浸しの部屋で

倒れているところを

職員が救出したときもある。



そんな彼がコッソリ教えてくれた。

「先生実はな、ワシ、

1日2回お祈りしよんや。」




わたしは驚愕して彼を二度見した。

だって、

言っちゃ悪いけど

お祈りするようなキャラではない。



今まで真面目に

働いてきたわけでもない。

彼の人生は借金とお酒に

まみれていた。



どうやら、

教会で開催されている断酒会に

行っているとのこと。


「お世話になってるし、

お祈りくらいしとこか。」

と、思うようになったと言います。




彼は続けます。


「朝起きたとき、

『今日も1日が素晴らしい日に

なりますように。』


夜寝る前に、

『今日1日無事に終わって

ありがとうございます。』

って祈るんや。


十字架切るんよ。

そしたら習慣になってしもてなぁ。

なんか安心するんよ。


家出るときにお祈りを忘れたら、

慌てて家に戻ってやりよんよ。


恥ずかしいから秘密よ。」




わたしは胸が熱くなった。

祈ったからと言って、

彼に特別な幸運は舞い降りない。

生活は何も変わらない。



でも、

彼の心は

安心と平穏に満ちている。



ないものを追いかけず

あるものに目を向けて

日々生きている。




「もっと早く

この境地に立てていれば、

違った人生になったのに。」

と、思う人はいるかもしれない。


今だからこそ分かるんだと思う。


すべてを失ったからこそ、

人生終盤に気づけた。





わたしは目を細めて言う。


「いいことを教えてくれて

ありがとうございます。


わたしも真似させてください。


十字架のやり方は分からないけど、

日々感謝することはできます。


〇〇さんのことも祈っときますね。」


こう伝えると

彼は照れていた。





日々の小さな幸せと安心に

どれだけ目を向けられるか。


どれだけ「ある」を

信じられるか。



わたしたちは

今、この瞬間から幸せになれる。


なぜなら心がけ一つで

見る世界を選べるから。











精神科医 諸藤(モロフジ)えみりの心のレッスン

精神科医のわたしが日々の思ったこと、感じたことを書いています。

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