やると決めた人は強い
こんにちは、
精神科医の諸藤えみりです。
「やると決めた人は強いな〜。」
と、思ったエピソードがあるので
ご紹介します。
外来に男性が
来られています。
この方はうつ病で休職中です。
「つらかった職場に戻りたくない。
仕事を辞めたい。
けれど、辞めていいのか。」
ずっと悩まれていました。
現状報告で定期的に
職場に電話をするそうです。
「『休んでるのに
よくなっていない!!』
と怒られそうで怖い。」
と、毎回言われます。
「そんなこと言う職場は
どうかと思う。
心配しなくていい。」
となだめたものの、
彼は緊張で
縮こまっていました。
この方はわたしよりも年下のため
「お姉ちゃん(←わたしのこと)が
代わりに電話しちゃろか?」
と、老婆心が疼く。
大丈夫かな?
と心配していました。
わたしのそんな心配はよそに、
前回外来に来られたときに
「元気です!!」
と活気に溢れていました。
「イラストを描くのが好きです。
休職中、
心を慰めるために
ずっと描いてました。
もっと絵が上手くなりたいです。
仕事はやめ、アルバイトをします。
お金を貯めて
絵画教室に通います。」
と言われます。
おぉ〜、
見事に吹っ切れている。
でも
いきなり絵で食べていくのは難しい。
仕事をして生活費を
確保しなければいけません。
働きながら
絵の上達を目指す計画を
立てました。
その後、
この方は
新しい仕事が見つかりそうなので
今の会社に退職を伝えると
言われました。
わたしは
「大丈夫ですか?言えます?」
と聞きました。
彼は力強く答えました。
「言えます。
怒られたとしても
『俺は絵を描きたいんだ!!
怒られてる場合じゃないんだ!!』
ってなると思います。」
わたし、爆笑してしまって。
「あんなにビクビクしていたのに、
腹を括ると
人ってこんなに変わるのだな。」
と、感心しました。
彼は続けます。
「僕が休職したての頃、
『同級生たちは働いているのに
自分だけ休んでいいのかな?
情けない。』
って思ってたんです。
そのときに先生が
『長い人生で休職なんてほんの一瞬。
自分の人生と
とことん向き合う時間を取れるのは
ある意味貴重ですよ。
イラストが好きなんですよね?
休職中に描いてみてはどうですか?
ただし、
しんどくないときですよ。
わたしもイラスト描くんですけど、
働いていたら時間がない。
たっぷり時間がある◯◯さんが
ちょっと羨ましいですもん。』
って言われてたんです。
僕、心が楽になって。
描いてたら道が拓けました。
ありがとうございました。」
………言った。
確かに言った気がする。
わたしの言葉を信じて
やりたいことをやり続けた
彼にこそ
「ありがとう。」と伝えたい。
この方は退職し、
新しい会社で正社員として
働き始めた。
もちろん
絵も描いている。
やると決めた人は強い。
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